🎞️ 私がビーバーになる時
⚠️ 前書き
このノートは主に自分向けの感想や当時感じたことを備忘録的に残すことを目的にしています。
そのためネタバレに対する配慮などは考慮しないので閲覧する際は注意してください。
映画情報
タイトル: 私がビーバーになる時
制作: Pixar Animation Studio, Walt Disney Pictures
上映時間: 1時間44分
視聴履歴
日時: 2026/05/03(日)13:30 - 15:30
場所: 地元のイオンシネマ
同伴: 妻
総評
主人公の振る舞い(自己利益のために他者の不利益を顧みない)を受容して楽しめる人は楽しめそう。そうじゃない人にはあんまり勧められないなという感じだった。
動物社会の描き方についてはピクサーのこれまでの作品の描き方の経験が活きていると思ったので、そういう部分での楽しみ方はできた。
楽しい部分もあったけど、万人受けする感じのものではないかも、という感想だった。
僕にとっては「メイベルがちょっと無理すぎて合わない寄り」だった。
全体的な感想
観た感想として真っ先に言えるのは、「主人公のメイベルはとにかく協調性がない」ということ。
これをコメディとかフィクションと割り切って楽しんで観られる人であれば楽しめる作品だと思う。
一方で僕のように「他人に迷惑を掛ける行為」を顕著に毛嫌いするタイプの性格だと楽しむよりも不快感のような印象が勝ってしまう。
主人公のメイベル・タナカは名前の通り日系の血を引くキャラクターになっているらしく、ディズニー作品で日系の主人公は初めてらしいのだが、日本人をこういう形で描かれるのは当の日本人として微妙な心境になった。
協調性のなさ具合の参考値としては、おさるのジョージを観て不快感を感じなければ楽しめると思う。おさるのジョージが不快なのであれば多分やめておいた方がいい。
僕の場合、おさるのジョージは「まぁ、猿のやることだし…」とギリ許せるのだが、本作は人間の大学生がやることで、終始周囲に迷惑を振り撒いているのがどうしても不快だった。
ジョージを許せる僕でダメだったので、ジョージを許せないなら絶対に無理だと思う🐒
一方で、動物社会の描き方はちゃんと面白いなと思った。動物同士は対話が可能だし基本的に仲も良い描き方もしている反面、生物としての食物連鎖を表現するために掟として「食べたい時は食べて良い。食べられる側も捕まった時点で拒んではならない」という価値観が浸透している。こうしたコメディと現実の境界が曖昧な描き方は独自な世界観の表現になっていて新鮮さや面白さを感じられた。
トイストーリーでおもちゃの社会を描いていたり、リメンバーミーで死後の人間社会を描いていたり、ズートピアで同じく動物社会を描いていたり、ファンタジーな世界設定に対して独自の文化や価値観を表現することは本当に得意なんだなと改めて感じた。
社会の描き方は面白かったが、主人公の描き方はもう少しどうにかならなかったのかととにかく惜しい気持ちがしてならない。
メイベルの具体的に何が嫌だったのか
基本的に終始協調性がないことに尽きるのだが、特に鮮烈に記憶に残っている部分を書く。
幼少期 - 動物泥棒
冒頭、動物好きのメイベルが通っている学校の動物を盗むところから始まる。この時点で僕としては「???」という感情だったのだが、とにかく何故か動物を盗む。そして大人に見つかり、母親から叱責を受ける。
まず最初の違和感として、この一連の流れで「メイベルが反省をしている色が一切無い」ということ。終始大人や親を睨みつけたり不貞腐れたりするばかりで、対話が通じない。子供なんてそんなもんやろというのはそうだが、物語の導入で最も興味を惹くべき場面でそこを描く必要ってあるのか??という疑問だけが膨らんだ。
この件でメイベルがおばあちゃんに預けられることで本作の鍵となる森に連れて行かれて思い入れが強くなって… という流れを表現しているのはわかる。わかるが、その導入のために僕が得たのは強い不快感だった。導入からつらい。
大学時代 - 抗議・署名活動
市長の都市計画による高速道路建設で思い入れのある森が無くなってしまうことを何とか防ぎたいメイベルは、市長への度重なる抗議活動を続ける。
民衆の賛同もあり計画が進んでいるものなので、市長は強気で「そんなに嫌なら市民から署名を得て正式に抗議をしろ」と返す。市長は概ね悪役的な立ち位置っぽいところがあるが、それにしてはめちゃくちゃまともなことを言っているなと思った。
しかし、前述の通り”民衆の賛同”もある状態なので署名は得られず、活動は徒労に終わっている。
この時点で、メイベルがやっている活動は少なくとも人間社会に於いては「メイベルのみが望んでいること」であることがわかる。
この描写の中に「そこに生きている動物が住む場所を失くすことで発生すること」を深く考えている様子があればまだ納得感があったかもしれない。具体的に生態系にどういう影響が出るのかとか、そういう具体的な何かが。
ただこのシーンにおいても「自分の思い出の風景が失くなることが嫌」という様子しか感じられず、動物のためというよりはあくまで自己利益のために動いているように見えた。
この粒度の動機であれば小学生もしくは中学生くらいの設定で良かったのでは?と思う。とても大学生がやる行動には見えない。
市長やいきなり訪問された市民は迷惑そうな様子で、「迷惑そうだなぁ…」という素直な感情でしか観れなかった。
大学時代 - 極秘研究の発見
ひょんなきっかけで自身が通っている大学で「動物型の機械に人間の精神を移動する機械」を開発する極秘プロジェクトを発見する。メイベルも受講していて面識のある教授が秘密裏に開発しているプロジェクトだったのだが、メイベルはこれでビーバーの姿になって池を取り戻すことで動物が戻ってくるのではないか?動物が戻れば都市建設も中止せざるを得なくなるのでは?と考える。
そのためメイベルとしてはなんとしてもこのプロジェクトを利用してビーバーになりたいわけだが、教授や助手の静止を振り切って勝手に装置に搭乗し、結果ビーバーになる。
のだが、静止の振り切り方もなんというかとても大学生のそれには見えないし、何より教授たちの言っていることに一切の聞く耳を持っていない。もはや自分の思いついたことを強行することしか頭にないような行動をしており、信じられないような気持ちで観ていた。研究室はぐちゃぐちゃである。
せめてまともな理由で説得して教授たちから納得を得られる形で進んで欲しかった。人間が動物社会に介入することで環境を乱してしまうかもしれないという真っ当すぎる忠告すら無視しているのはとても救いがない感じがした。
動物社会 - 虫殺害
動物界で「評議会」と呼ばれる各分類(魚類、爬虫類、哺乳類、鳥類など)の代表が集まって議論をする集会にて、メイベルは哺乳類の代表補佐として高速道路の建設を中止させるために市長の悪事を暴こうと働きかける。
その結果、昆虫代表の蝶が暴走し市長を消し去ろう的な強行的な意見を出すが、それを静止する過程で蝶を叩き殺す。
文字通り殺害である。にも関わらずメイベルは責任を感じるどころか「やべ、やっちゃった…」みたいなあんまり反省の色がないリアクションをする。そしてその後トンズラをする。
哺乳類代表補佐としての行動で哺乳類の立場を危うくし、動物社会を乱し、怒った動物たちの反旗によって人間社会をも危機に晒す。誰も得しない結末を生んだだけだった。
クライマックスは必要なので危機的状況を描く必要はあると思うが、結構自業自得でしかなくてあんまり共感も納得もできなかった。
と他にも挙げ出すと色々あるのだが、これ以上書き連ねると不快だった話が8割くらいになってしまうのでこれくらいにしておく。だが、概ねずっとこんな感じのテンションで続く。
気になったこと
そもそもこの映画で伝えたかったことってなんなんだろう?と言うのがあんまりしっくり来なかった。
人間(動物含む)ドラマなのか、環境破壊に対する警鐘なのか、なんらかのメッセージングがあるのか?と考えたが個人的には何かに振り切っている印象をあんまり受けなかった。
ズートピアは種族の違う動物が理解し合うための物語を感じるし、トイストーリーはおもちゃの視点を見ることでモノを大事にする心を学べる。こういうわかりやすいコンセプトみたいなものを本作からあんまり感じることができなかった。
環境破壊に対する警鐘ならそれはそれで、もうちょっと真っ当な描き方はできなかったものなのか?と思うところがある。
例えばメイベルに動物好きの大学生で、「ずっとあの森を守っていきたい」という動機があるなら彼女自身が大学の研究で動物社会を直接観察できるように発明をした。みたいな描き方も出来るんじゃないのかと思うし、主題に関係のない迷惑行為をわざわざ描く必要性もなかっただろうに、とかどうしても考えてしまう。
その結果として動物がもたらす環境保全の効果をしっかり立証することで民衆の理解を得る。とか、その過程で判明した市長の恣意的な動物避けを正しい手段で民衆に報せるとか、もっと見せ方ってなかったの…?という気持ちがとにかく強い。メイベルに協調性がなさすぎるが故にこういう描き方もできなくなっているんじゃないのかと哀しい気持ちで観ていた。
やっていることとしては環境保全を盾に美術館の美術品にペンキを投げつけるアレと本質的には同じことをしていないか?という感じがして仮に環境保全もテーマに含んでいるのだとしたらかなり強烈な思想の表現だなという印象だった。
おそらく今後金曜ロードショーで放送されたり動画配信サービスで配信されたとしても、僕は二度目は観ないと思う。
ピクサーだしズートピアで成功している動物社会を同様にテーマにしていたし、そういう意味でかなり高い期待値で観始めてしまったので期待値に対しては残念さがとにかく勝ってしまった。
ちなみに一緒に観ていた妻は普通に楽しいと言っていた。のでやっぱり人によって合う合わないがしっかり分かれるんだと思う。まぁそれは万物そうか…。
さすがに楽しかったと言っている妻の前ではこのノートほど具体的に不満は広げていない。「メイベルちょっとアレじゃない…?」みたいなことは言った気がするけど、動物社会の描き方とかちゃんと良いところは良かったのでそういうところで楽しめたみたいな話をしたと思う。
この反動でズートピア2をもう一回観たくなった🐰🦊
ズートピア2はそれはそれでジュディの言動がニックに対して酷なことを言っているシーンがあって「オイ!!」と思っていた記憶はあるんだけど、こっちはちゃんとそれに至る心情とかが垣間見えるからか不快感はなかった記憶がある。
批判っぽい内容が多くなってしまったが、動物社会の描き方とかピクサーらしさを感じられる部分はちゃんとあったのでそこは本当に良かった。メイベルに対する不満が多すぎてそれを書く割合が減ってしまっているけど。